元銀行員税理士が語る決算書はまずここをチェックして!

 

決算書を税理士に任せっきりにしていませんか?

税理士は税務申告(決算書)が正しければ良いと考えている人もいて、
銀行の評価を考えずに、決算書を作成しているケースがあります。

税理士として税務申告(決算書)が間違っているわけではないのですが、どうせ作るならより良い決算書を作っていきたいですよね?
(税理士の試験では銀行のことを問う試験があるわけではなく、自ら勉強しなければ銀行の評価体系を知ることができません。)

 

今回は決算書にできる限り載せてはいけない「役員貸付金」について書きたいと思います。

銀行借り入れをしている、考えている方はこの考え方をもって最低限決算書をチェックしましょう!

 

 

目次

役員貸付金ってなんで発生するのだろうか

そもそも役員貸付金ってどんなことをしたら決算書に載るのでしょうか。

会社から借りた、という意識がないのにもかかわらず役員貸付金が発生してしまった、というケースが多いです。

原因1 社長個人と会社を一体に見ている

これは中小企業にありがちなんですが、社長は自分自身と会社を一体に見ていることからどっちのお金か分からず使ってしまっていることがあります。

もちろん、私は社長個人と会社は一体、一蓮托生として見ています(中小企業の場合は特に)。人生がかかっていますし、
会社がもしお金が足りなければ私財を投じてまで立て直そうとすると思います。

なので、私がお客様とお話しする場合、会社のことだけではなく、社長個人のプライベートの状況についてもお聞きし、
今後どう経営していこうか、ということを一緒に考えています。

原因2 役員給与以上の生活費がかかってしまっている

創業期のお客様に多い原因の一つです。

利益が出る見込みが分からないため、生活費を考えずに給与を赤字にならない程度にギリギリで設定してしまったことから、
給与以上のお金を会社から引き出している場合です。

 

原因3 経費だと思っていたけれど、経費にならなかった

経費だと思って使っていたけれど、税理士に言われて経費にならなかった場合にも役員貸付金が発生してしまう
危険性があります。

利益が出てしまうと、つい税金対策のために、プライベートと思われる費用も経費で落とす!という方もいます。

でもその費用って慣れている人が見るとプライベートだな、と分かってしまうことも多く、経費とできないことがあります。

 

なぜ銀行評価が悪くなるの?

でも、なぜ銀行評価が悪くなるのでしょうか。

自分の会社ですし、利益があがっていれば銀行は文句を言わないんでしょ? って考えている社長もいらっしゃいます。

では、評価が悪くなる原因も考えてみましょう。

 

原因1 会社の私物化

実は銀行って会社の私物化を嫌います。

銀行はお金を貸すだけではなく、返してもらうまでが仕事です。
社長が会社を私物化し好き勝手してしまうと業績が良い時はまだ良いのですが、悪くなったとたん返済資金がなくなり、
すぐに倒産!という危険性があるためです。

社長個人と会社は一体であるという考え方はありつつも、私物化し好き勝手してはいけません。

社長一人で会社を行っている場合は影響が少ないかもしれませんが、社員が一人でもいれば、その社員は
会社のために働こうなんて思わなくなってしまいます。

 

原因2 貸したお金の資金使途が分からなくなってしまう

銀行において資金使途はとても大切な考え方です。

貸したお金が何に使われたのかが分からなければ、お金がどうやって返済されるのかという絵が書けなく、稟議も
通らなくなってしまいます。

「会社が社長にお金を貸した」というのは会社からだけを見た表面的なお金の使われ方です。
そのあとの、社長が何にお金を使ったのか、まで知らなければお金の使われ方が分かりません。

社長にお金を貸した場合、多くはプライベートでお金を使っていることが多く、
貸したお金の返済原資がなくなることに対して、銀行は嫌がるのです。

 

原因3 役員貸付金を資産として見れなくなってしまう

役員貸付金は決算書では資産として計上されています。
資産とは会社の財産であり、貸したお金を返してもらえる原資となるものです。

その資産である役員貸付金が社長のプライベートで使われ、会社に戻ってこない、となったらその資産は資産と
してみてくれるのでしょうか。

もちろん、会社に戻ってくるかわからないものを資産としては見ることができないですよね。

そうすると、その会社の評価が下がり、格付けにも影響を与えてしまうのです。

 

どうやって解消するの?

では、役員貸付金が発生してしまったらどうやって解消していくのでしょうか。

解消方法1 給与を増やす

真っ先に検討することはこれです。

社長の額面の給与を増やし、手取りを今までと一緒にするならば、その差額を会社に返済したということで処理をするのです。

貸付金を減らすには時間がかかってしまいますが、簡単な方法です。

 

解消方法2 退職金で返す

残念ですが、給与を増やしただけでは返済できない場合、社長が退職した際に、退職金の一部から返済する、という
方法があります。

 

解消方法3 会社へお金を返す

考え方は簡単です。

会社からお金を借りたことになっているから、そのお金を返すだけです。

いやいや、そんなお金ないよ。 そのお金がないから会社から借りているんだよ。 って声が聞こえそうです。

実は最近では保険を使って社長がお金を借りて、それを会社へ返すという方法もあります。

社長としては返済することは変わらないのですが、会社の決算書から役員貸付金が消えるので、
銀行評価があがります。

 

解消方法4 債権放棄

会社が貸付金を返さなくて良いよ!と、社長個人にいうことです。

すごく簡単じゃん! それいいね! って思う方は多いと思いますが、もちろんデメリットがあります。

デメリットは、債権放棄すると、社長個人が得することになるため、社長の賞与と言われ税金がかかるからです。
社長の賞与は正式な手続きを踏まないと経費として認められないので、慎重な判断が必要です。
また、株主が一人なら良いのですが、第三者の株主がいる場合、債権放棄は会社が損をすることになるので、第三者株主からNoを突き付けられることもあります。
(まあ、勝手に債権放棄して資産が減るのは株主としては「おいおい」って思いますよね)

 

今後、役員貸付金を増やさないために

既に役員貸付金がある方は役員貸付金を解消するとともに、今後増やさないことも合わせて考えておきましょう。
(役員貸付金がない方は発生させないように参考にしてください。)

 

対策1 適切な役員給与の設定

生活費が多くて役員給与が足りない場合は、役員給与を適切に設定しましょう。

また役員給与を増やすだけの給与を支払うことができない会社の場合は生活費を見直しことも大切です。
(生活費を見直して利益をあげ、十分な利益が出るようになったら給与をあげ、生活費を増やしましょう!笑)

対策2 社長個人と会社の財布を分ける

やはり社長個人と会社の財布を分けることは大切です。

どれだけ会社のために使ったのか分かりやすいです。
口座はもちろん分けているかと思いますが、クレジットカードなどの電子マネーも分けることが大切です。
(現金での購入の場合でも、かごを分けて清算し、レシートを分けることも大切です)

 

対策3 どういったものが経費になるか再確認

社長が経費だと思っていたけれど経費にならないものも改めて確認してみましょう。

法人の経費となるものは、法人の事業に関連して使用したものです。

第三者に経費の使い道を説明し、「あれ?それ関係があるの?」と思われたものは経費とならないケースが多いです。

第三者の一般常識の目線を持ちましょう。

 

 

まとめ

あるお客様で前の税理士が役員貸付金の重要性を理解していないまま長い間決算書を作成していて、
なんと役員貸付金が約1億円もあったんです!

そのお客様は銀行から借り入れができない、できたとしても金利が高いと悩んでいましたが、
役員貸付金を減らしていくことにより、借り入れができるようになった、資金繰りが回るようになったと喜んでいました。

約1億円はさすがにやりすぎだと思いますが、役員貸付金が決算書に載っているだけで銀行評価が悪くなる
可能性が高いので是非見直してみてくださいね。

 

 

記事を最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
ブログランキングに参加しています。


にほんブログ村